中道往還の山岳部をたどる(精進~古関~右左口)
(紅葉が残る迦葉坂のひとコマ)
御坂山地の西端にあたる上九一色・下九一色の辺りはアプローチの長さとその標高の低さもあって、コースを考える上で「帯に短し襷に長し」的な箇所が多く、長年課題になりながら歩けていないところが実は多かったりします。
今回歩いた甲斐と駿府を結ぶ中道往還の山岳部を通る阿難坂と迦葉坂は、昔からその名前と歴史的な興味があったものの上記の理由によりなかなか歩けなかった区間。その二つを繋ぐことを思いついて、ようやく歩いてきました。
(精進の諏訪神社と大杉)
しかしですねえ精進湖も観光客の増加でバスはひところよりも便利にはなったけど、まだまだ朝は遅くて歩き出しは10時前、、、。もう一時間早い便設定しませんかね?(笑)とはいえ精進湖あたりのコースはこの時間で回れるコース(三方分山~パノラマ台)がメインなので問題ないのでしょうね。事実そこを歩きそうなパーティもいましたし。
さっそく歩き出して驚いたのが集落を通る中道往還が石畳になっていたこと。そしてなにはなくともまずは諏訪神社に参拝します。藁葺きの社殿と幹まわり10mはある大杉が見事で、ここは時間がなくても寄りたいところ。一見の価値ありですよ。
(女坂峠<阿難坂>)
今回は行程が時間的にというか日没的にタイトそうなので若干速めに歩いて30分ほどで女坂峠にあがりました。ひところは良く訪れていたこの峠も11年ぶり。初訪の折からある道標は実は南の古関方面もしっかり指しています。
まぁ阿難坂という名前がついているぐらいですからこの先もお気楽に歩けるつもりで下り始めると、たしかに最初は登山道と見まごう明瞭な道がつづら折れに下っていて気分良く歩けていたのですが、
(阿難坂・下部は荒れていて道筋は不明瞭)
沢筋を下る辺りになると、やはりというか沢自体が荒れていてなーんか不明瞭になってきましたよ。ここは沢筋を下るそれなりの所を下るのが正解でしょう。ちなみに沢筋から林道とおぼしき道へトラばる地形図の破線路は確認できず。分岐はおそらく堰堤まで下る前の植林の辺りだと思われます。
沢に堰堤が現れると道は再び明瞭になり、じきにR358が通る精進トンネルの出口脇に飛び出しました。すぐ先に架かる橋はその名も「阿難橋」。
(地形図の破線路は林道か?)
中道往還の古道はそのまま沢筋を下るようなのですが、国道がしっかり造られており降りるしまがありません。ここは破線路の確認もかねてしばらくR358を歩き(ここを歩くのはマジで怖かった、、、)、↑↑分岐を確認するとやはり林道ですね。
分岐を確認したら、枝尾根を適当に拾って寺川沿いの林道に降り立ちました。
(古関に降りてきました)
しばらく降りると古関に出るのですが、かつては山の登り降りで足早にしか歩いていなかった古関の様子を丹念にみられたのが、この日の山歩きで最大の収穫だったかも。
石尊権現や古関の関所跡、古道らしい町並みを通る雰囲気にも惹かれるものがありましたし、なにより今のいままで気づかなかった旧上九郵便局の建物が見事でした。すぐ脇にあったのになんで今まで気がつかなかったのだろう(笑)。
(旧上九一色郵便局の建物)
(境川を渡った辺りが取付)
古関をくぐり抜け、再びR358に出るとここからしばらくは芦川沿いに歩きます。個人的に因縁のある上九一色の村役場は温泉施設に変貌しており、併設されている「農業レストラン」に興味津々。頃合いも良かったし寄りたかったんだけど、一年で一番日の短い季節ゆえ泣く泣くスルーせざるを得なかったのが心残りです。
道がR358から県道に変わると車は激減して、舗装路でもなかなか良い雰囲気。気分良く歩いていると今は甲府と市川三郷の境である境川を渡り、その先に祀られている庚申塔や馬頭さまに挨拶。そこではなく、そこから一つ先の階段が迦葉坂の取付でした。(道標の類いは皆無)
(イロハモミジに間に合った!)
(古道らしく馬頭さまが点在している)
登りだしから道は明瞭で、しかも石畳が残っている!これはもう迦葉坂に間違いないでしょうって感じで道が延びています。12月半ばだというのにイロハモミジなど紅葉がまだ残っていてラッキーでした。
さすがに中道往還の古道だけあって道中は馬頭観音が点在しており、しかも石像一つ一つに設置した説明書きがあり、これはどれぐらい前に設置されたものなのでしょう?道標はないけど説明書きはある。ろくすっぽ歩かれてないけど古道で道筋はしっかりしている。妙に不思議ではありますね。
(雑木林の多い佳き道です)
(柏尾坂峠<迦葉坂>)
そしてなにより植林は少なく雑木林は多いのがいい!静かな落ち葉道の感触を愉しむようにゆるゆる歩けるひとときはただただタマランチ会長。上部で尾根が広がると道は若干不明瞭になりましたが、慣れていれば問題ないレベルでしょう。
上がるにつれてなんか植林が増えてきたなあ、と思ったらそこが柏尾坂峠でした。
(これも馬頭観音)
芦川北稜に上がるのも本当に久しぶりで、この辺りは迦葉坂だけでなく、ろくすっぽ歩かれていない明瞭な古道がいくつもあって惹かれるのですが、今回は横切るだけ。すぐに甲府側というか右左口側への下りにかかります。下りだしすぐに現れる、まろやかな姿の日蔭山がなつかしい。
ひと下りしたところで東の右左口峠との分岐に出ると、ここで女坂峠以来の道標(私製)があって驚きました。道標に書かれた字をみるとおそらく下芦川辺りの方のような気がしますが、どうでしょう?
(右左口側では如意輪観音も)
そしてもっと驚いたのが、ここで先ほどの私製の道標とはまた違う甲府市で設置した道標が現れたこと。道上に木が育っていたりして、ろくすっぽ歩かれてない雰囲気がプンプンだけど、よ~く道を観察してみると崩れかけた階段があたったりして確かに一度は整備されていた感じです。
あと仏様の類いがより増えたのも興味深いところ。馬頭さまだけでなく如意輪観音や千手観音も。これは道が南側より険しいゆえなのかもしれませんね。芦川沿いだってかつては難所が多かったからこそ馬頭観音が多いわけですから。
(甲府盆地を見下ろす・八ヶ岳は雲の中)
(千手観音も!)
ただこちら側は雰囲気は悪くないけど、稜線の北側ゆえに日が入らず(しかも日の短い時期だし)少々暗いのが残念なところかも。柏尾坂峠から小一時間ほどでR358の右左口トンネルの出口に出ました。そしてすぐ先に架かる橋は「迦葉橋」。あれどっかと似てるぞ(笑)。
ただ阿難坂と違うのはそのままR358を突っ切れば続きの山道が延びていること。なぜか道標はなくなりますが道筋は明瞭。じきに広い舗装路に出ると、あとは右左口のバス停まで直線に延びる道を下るだけです。
(ろくすっぽ歩かれてないが道は明瞭)
この道も中道往還の名残で、お寺や土蔵が点在する右左口の宿場町をストレートに下るのはなかなか気持ちのよいものです。古道というのは歩くだけで不思議と気持ちのよくなる箇所が多いですね。いわゆる気の通りがよいのでしょうかね?(笑)
(右左口の宿場町を直線に下るところ)
気分よく下って小広いロータリーに出るとそこが右左口のバス停。でも土日はバスが運行してません、、、。ただ予想よりもかなり早く降りられたので西の豊富のバス停まで歩いてみたら、これまた案外近くて右左口から35分ほどで着いてしまい(笑)早すぎて甲府駅行きのバスが一時間待ちになったのは想定外でしたけど、幸いでしたね。
今はろくすっぽ歩かれていない古道をていねいに辿り、いにしえの往来に思いを馳せると、なぜにこうも心が洗われるのでしょう。身も心もどこかスッキリ解放されたようないい山旅だったなあ、としみじみ思いつつ帰途についたのでした。
・・・・・☆
◆ 2019.12.14 (Sat) 快晴
河口湖駅 09:05→ 精進BS 09:45- 諏訪神社 09:50/09:55- 女坂峠 10:30- 阿難橋 11:05- 旧上九一色郵便局 11:55- 境2号橋 12:30-(途中休憩15分)- 柏尾坂峠 13:50/14:00- 迦葉橋 14:45- 右左口BS 15:25- 豊富BS 16:00