« 黒部峡谷・下ノ廊下を歩く 1 | トップページ | ほぼ砥山西尾根を下るだけの山歩き »

2014.10.05

黒部峡谷・下ノ廊下を歩く 2

B141004a
(旧日電歩道・S字峡への道すがら)

まぁ周囲に気兼ねなく過ごせるせいなんでしょうけど、テントは小屋よりもよく眠れるような気がします。おかげで3時にパッチリ目が覚めて、星空の広がるもと朝食をとって、さっさと撤収。5時ちょい過ぎにはスタートできました。

お彼岸過ぎると5時でも周囲はまだ真っ暗。阿曽原峠に上がり、仙人谷ダムへ向かうと周囲も明るくなって、もうライトも要らないなと思うようになった頃、ものすごく立派な関電の人見平宿舎に出ます。

B141004b
(温いトンネルを歩きます)

水平歩道はここで終点。ここから先は旧日電歩道となって、しばらくはダム施設内のトンネルを歩くことになります。中は高熱隧道が近くを通っているせいかぽかぽか暖かくて、涼しい朝にはちょっとだけ快適です。

そんな中をしばらく歩き、「踏切注意」の看板が出るとその先は本当に踏切で、高熱隧道から出てくる関電の黒部専用鉄道の線路が通っているのでした。

B141004c
(高熱隧道を抜けると一般人は乗れない仙人谷駅)

そしてその線路はすぐ左手に延びている橋梁で黒部川を渡っていて、その橋梁上には関係者だけが乗降できる仙人谷駅があるのですが、当然カタギのハイカーは乗れません。

試しにホームに寄ってみると、きちんと時刻表やガイドまであって、なんかくやしいなあ。。。。欅平か黒部ダムまでなら一万。通しなら二万まで出してもいいんですけど・・・ダメデスカ?(笑)

B141004d
(仙人谷ダムと雲切谷の滝・ガンドウ尾根)

B141004e
(東谷吊橋)

踏切に戻ってからなおも先を行くと、こんどはなんと建物(仙人谷ダムの事務所)の中を通り、ようやく外に出るとそこは仙人谷ダムの真上。ここで対岸(右岸)へ渡ると、そこから先はしばらく林道歩きが続きます。

そして行く先に黒四地下発電所からの送電線が見えるようになると、東谷吊橋で再び左岸に戻って、旧日電歩道もここからが本番です。

B141004f
(吊橋を渡ると旧日電歩道も本番!)

B141004g
(S字峡)

左岸に戻ると少し登り返して、ここからが下ノ廊下の一般的なイメージでもある岩盤をくりぬいたような高巻き道の始まり。

道はこの時期あまたのハイカーを通すこともあって、細いながらも想像よりもかなりしっかりしており、遙か下に黒部峡谷の流れを見ながら歩く道のりは、程よいスリルを味わえます。とはいえ、一歩誤れば確実に命を落とす区間ですので、慎重に歩かなければいけないのは当然のことですね。

B141004h
(オヤマリンドウ)

B141004i
(こんな道のりが続きます)

そんな道なのでちょっとした休憩場所にも気を遣います。今回は人が少なかったからさほど問題はありませんでしたけど、これからは人も格段に増えるでしょうから、そうなるといろいろ大変でしょうね。混んでいるときは自分のペースで歩くのはかなり難しそうだし。

S字峡、半月峡と黒部の谷の深さに驚嘆しながら歩いていくと、徐々に水線が近くなって、次の剱沢にかかる吊橋が十字峡。もちろん吊橋からも眺められますけど、ここはぜひとも下の展望台へ降りたいですね。

B141004j
(十字峡・もちろん展望台に降りました!)

ということでもちろん展望台に降りましたけど、降り口の道標が壊れているせいもあって、展望台で休んでいる間もみなさん通り過ぎるばかり。これは本当にもったいないと思いました。

あっあとその降り口に立つ双頭ネズコの大木も見事。朝食が3時過ぎだったので、展望台で早くも昼食です(笑)。

B141004k
(ここは水を浴びながら通り抜けるしかない)

B141004l
(水線に近づくと朝日が差し込んできた)

B141004m
(チョウジギク)

十字峡を過ぎると道はより水線に近づき、今までの岩をくりぬいた道から樹林帯、草原なども交えて少々雰囲気が変わってきます。そしてここでようやく黒部の深い谷にも日差しが入るようになって、明るくなるのは単純に嬉しかったんですけど、日差しが強烈で、暑い(笑)。

でも日差しが入るのもさほど続かず、再び谷が深くなると再び岩の続く道に変わって、白竜峡に入ります。

B141004n
(白竜峡のひとコマ)

B141004o
(水流の勢いが凄まじい)

個人的には白竜峡が旧日電歩道の中で一番のハイライトでした。相変わらず岩をくりぬいた道が続くのですが、違うのはすぐ下を川幅が狭まり、ごうごうと音と立てる黒部の流れを間近に見られること。

その道の様子、流れの迫力もさることながら、ここで下り組とのスライドが始まったのも良いアクセントでした(笑)。ホント混んでいる時期はいったいどんな様子になるのでしょう。。。

B141004p
(黒部別山が見えるようになると)

B141004q
(黒部別山谷・壁尾根は綺麗に色づいていた)

そんな白竜峡を抜け、ふたたび川幅が広がると黒部別山谷の出合で、落石に注意しながらもここでようやく一息つけます。

別山谷を渡る箇所にもう雪はなく、奥にブロックをいくつか見るだけ。でも谷の奥に延びる壁尾根の紅葉が見事で、しばらく見とれてしまいました。

B141004r
(残雪は新越沢出合付近のみ)

B141004s
(シナノナデシコ・今年も逢えるとは!)

黒部別山谷から先は川床が広がってほぼ水線に近いところを歩くようになります。

雪のブロックが残っていた新越沢出合の辺りも高巻きのハシゴ・桟道が造られており、難なく通過。整備の方には本当に頭が下がりますね。

B141004t
(内蔵助谷と丸山東壁)

B141004u
(行く先に赤沢岳西尾根を望む)

その先も道は相変わらず水線に近い所を通っているので、このまま川床歩きが続くのかと思ったらやはり甘くて(笑)、川床に近いからこそ小さい高巻きを繰り返す道のりは少々しんどいかも。

それでも徐々に標高を上げていることもあって、周囲の低木は色づき始めているし、ふと山の斜面を見上げれば綺麗に色づいた山肌が目を楽しませてくれる楽しい道のりです。

B141004v
(ハウチワカエデ)

B141004w
(この辺りは低木類が色づき始めていた)

B141004x
(トガクシコゴメグサ)

じきに着いた内蔵助谷で真砂沢からの道を合わせると、そろそろ終盤。相変わらず続く高巻きの連続は、真砂沢の方の道もそんな感じなのでしょうかね??

周囲の山山や紅葉を楽しみつつ先を行くと、まもなく平坦な歩きに変わって、ようやく見えてきましたよ、ラスボスが(笑)。

B141004y
(ようやくラスボス登場!)

放水の水煙で良い具合に煙っている黒部ダムを間近にいるともうゴールの様な気になってしまいますけど、まだくゴール「間近」なんですね。じきに現れる橋で右岸へ渡ると、最後の200mの登り返しが待っています。

思いの外早く着いたので橋のたもとで10分ほど休憩してから登り返したのですが、想像通り、ここがこの日一番しんどい所。最後の最後でコレはきついけど、しょうがない。ガマンしつつ何とか登っていると、徐々に周囲が見えるようになり、

B141004z
(立山方面もよろしい感じ♪)

今さっき歩いてきた方向には黒部別山と大タテガビンが一望。ようやく見られたその姿に感動していると、今度は中段辺りが綺麗に色づいた立山が目に入って、ひとり声を上げてしまいます。

本当はこの辺りでトローリーバスの駅に入るのが正式な道なんですけど、それを見過ごし、黒部ダムの展望台まで行ってしまいました(笑)。

B141004aa
(黒部ダムに着きました)

でもでもそのまま行ってしまったお陰で大回りすることもなく、ダムに出られたのはラッキーでした。湖面がきらきら光るダムの様子はちょっとオーバーな言い方をすれば神々しく、まさにフィナーレに相応しい光景。

うまく行くときは得てしてこういうものなのですが、今回はちょっとデキすぎだったかも。帰りもハナから諦めていて考慮にすら入れてなかった白馬発のあずさに乗れたし。今年の夏が酷かったこともあって、本当に久しぶりにいろいろな意味でスッキリしたというか突き抜けた山行きになった事には感謝の言葉しかありません。紅葉の時期もこんな歩きができたら嬉しいなあ。。。
  
・・・・・☆
 
◆ 2014.09.28 (Sun)   快晴
阿曽原温泉小屋 05:10- 仙人谷ダム 06:20- 東谷吊橋 06:40- 十字峡 08:00/08:30- 白竜峡 09:20- 黒部別山谷出合 09:50/10:00- 内蔵助谷出合 11:40- 黒部川を渡る橋 12:30/12:40- 黒部ダム 13:05
 
 
ほうじ茶(PET350ml) ¥140
黒部ダム~扇沢(トローリーバス・荷物代込) ¥1740
扇沢~信濃大町駅(バス) ¥1360
 

|

« 黒部峡谷・下ノ廊下を歩く 1 | トップページ | ほぼ砥山西尾根を下るだけの山歩き »

【その他の山域】」カテゴリの記事

コメント

リブルさん、

自分も北アの主だったところはほぼ歩けてきたのですが、その前からみなさんが黒部黒部と言っている意味がよくわかならくて、なんでそこまで黒部にこだわるの?という疑問を実は持ち続けていました。

でもそれもぼちぼち黒部に入るようになって、何となくわかってきた。自分もちょっとはその気持ちはわかるようになってきたのかも。

そうそう高熱隧道はこれから読むんですよ(笑)。例えば劔だったら「点の記」読めとよくいいますよね?確かに読むことによって理解が深まるのかも知れませんけど、反対にバイアスも出来てしまう。自分の場合、それがあまり好きではなく、黒部に限らず、山に入るときは必要以上に情報を入れないで歩いているんです。一番最初はまっさらな(というのは実はあり得ないんですけど)状態で歩きたいというか。。。

投稿: komado | 2014.10.06 20:01

kbさん、

前の記事でうすうす感じていましたけど、やはりkbさんは高いところは苦手ですか。自分的にはアレが魅力なんでした(笑)。

でもお陰で好天の許、良い時期に歩けました。本当はもっと山のテン泊に慣れておく予定だったんですけど、以前バイク乗っていた時にキャンプをさんざんやっていたので、久しぶりでも自然に出来たのが自分でも意外でした。

裏劔の時は山だけでなく、小屋も楽しみたいと思っております。

投稿: komado | 2014.10.06 19:52

懐かしいですね。
写真を見ていると、あの時の楽しい山歩きが蘇りますよ。今のきれいなカメラで撮れるのは、ちょっとうらやましいです。自分が歩いた頃はまだデジカメは出はじめでしたからね。
丸山など本当に迫ってくる感じが「廊下」という言葉をそのまま反映していますね。

自分も十字峡の展望台は通り過ぎてしまいました。今考えてもくやしいです。(^^;

そうそう、あの温かいトンネル、自分は気持ち悪く感じました。
吉村昭「高熱隧道」はもう読まれましたか?かなり悲惨な工事だったようです。でも、あれを読むたびに黒部の歩きを思い出します。

投稿: リブル | 2014.10.05 22:14

それ程の混雑も無く紅葉も見られ天気は上々。
これ以上望むことのない条件の下の廊下でしたね。
写真で見るだけで充分コースを堪能しました。
以前に誘われたことがありましたが水平道を歩いただけで
もう十分。 写真でもその高度感を感じました。
裏剱是非自分の目で見てその感動をこのページに記載
されることを待っています。

投稿: kb | 2014.10.05 10:40

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 黒部峡谷・下ノ廊下を歩く 2:

« 黒部峡谷・下ノ廊下を歩く 1 | トップページ | ほぼ砥山西尾根を下るだけの山歩き »